データ分析のその先に ── 2年目のDX経営塾・データドリブン経営
今年も、各地の「DX経営塾」で「データドリブン経営」の回を担当します。
私は浜松「DX経営塾」2期生。講師2年めとなります。「DX経営塾」のはじまりは、2022年の浜松商工会議所でした。経営者・経営幹部の皆さまが自社で、DX推進を盛り込んだ経営計画をつくるまでを伴走する実践型セミナーとしてスタートしました。
NVIDIAのCEO、ジェンスン・フアンは今年のCOMPUTEXで「今やAIトークンをどう使いこなすかは、経営そのものと同義になった」と言っていますが、それを遡ること4年、考えてみればずいぶんと先進的な考え方だったわけです。
そんなDX経営塾も浜松商工会議所は第5期。名称も「意思決定力改革塾」へ変わりました。各地で定番化し、2026年度は浜松・高松・都城・姫路・名古屋の各商工会議所、および福井産業振興センターの6拠点で開かれます。統括は、モノデジタル株式会社・和田正典氏です。
すこぶる評判のいい、定番シリーズになりました。DXのデジタル(D)よりも、変革(トランスフォーメーション・X)を軸にしていることも新鮮ですし、「ChatGPTのプロンプトを覚えましょう」など、座学でテクニックを学ぶのではなく、マインドセットを入口にDX時代の経営を構想し、同じ地域の経営者同士が悩みを言葉にし合う場へと育っています。ふくいの受講者の声にも、「本質がなんとなく見えるようになった」「他社の取り組みが参考になった」「仲間が増えて心強かった」といった感想が並びます。わたし自身も、登壇させていただきながら、毎年学び直させていただいてます。
人手不足と事業承継の、その先に
昨年のスライド冒頭に書いたゴールは、ふたつでした。
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人手不足の解消
- コンピュータを働かせて、データを活用する仕組みをつくる
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事業承継
- 社長の「勘・コツ・経験」による判断を、データに裏打ちされた意思決定へ置き換えていく
この2つは今年も大切な目的ですが、AIが更に進化した今年はもう一歩先を見据えています。DXやAIの目的は変革であって、決して業務効率化だけではないのですが、そのプロセスでやはり「作業効率」に向き合う瞬間が訪れます。効率化が進むことによって空いた時間が生まれるのです。すると現場では、こんな疑問が生まれがちです。
「時間はできた。……では、そこからいったい何をするんだ?」
すべての社員さんが自発的・自律的に行動できる訳ではありません。空いた時間に、意味の薄い仕事を増やしてしまったのではDXを進めた意味がありません。効率化はプロセスのひとつであって、ゴールではない。その先は、「誰に何を届けるのか」という商売の原点に立ち返らないと、仕組みを作り上げた意味もありません。今年の「データドリブン経営」で軸としたいのは顧客にとっての価値です。
我々の顧客は誰か。顧客にとって何が価値なのか。お客さま自身も言葉できていない価値を、どう創り上げ、どうやって届けるのか。構造化したデータや浮いた時間は、顧客の気持ちに向き合うための余白です。現場の言葉と経営の言葉をすり合わせるのは、やはり顧客のためなのです。顧客のことを考え抜くほど、マーケティングとイノベーションという基本的な軸が浮かび上がります。顧客自身よりも顧客のことを知るための材料は、長く事業に携わってきたベテランの頭の中や社長の判断基準にあります。──いわゆる情報資産です。
勘も、コツも、意思決定の基準も、特定の誰かの中だけに閉じたままでは、次の世代にもAIにも渡せません。この話は、先日書いたコラム(「あの人にしか判断できない」を、会社の資産に)と地続きです。セミナーでは、わたし自身が経験した一次情報として、設備メーカーでの日程管理や購買の属人化解消など、現場でぶつかった成功と失敗も共有します。ツールが起点ではなく、問題が起点であること。失敗の多くは、技術ではなく人の関係性にあること。きれい事だけでは終わりません。
ダッシュボードを使ったデータの見える化にも取り組みますが、きれいなダッシュボードをつくることがゴールではありません。現象から導き出された本質を元に、誰にでも使いこなせる基準で、データを整えることが重要です。
- 「暑い」ではなく「気温は35℃」
- 「売れている」ではなく「前年比150%の売上」
そのうえで、現象の向こうにある急所、本質──(ボウリングに例えると、連鎖が起きる急所、センターピン)──を探します。勘や経験を土台に、経営者と現場リーダーが同じ言葉を使い、次の一手を共に作りあげる未来の話です。
架空のフルーツショップ経営で数字を読む
「データドリブン経営」では、実際に手を動かして「データベースを理解する」ことも大切な目的となります。まず Notion を使って「くだもの屋さん」のデータベースを組み立てて頂き、表計算ソフトの表と、データベースの違いを体感します。続いて、架空の企業「フルーツのダーハラ」(静岡・磐田のフルーツショップをモデルにした演習事例)の販売データを読み解きます。
最新一年を見ると、たとえばこんな姿が浮かびます。売上は約1億円、限界利益率は約40%台。一見悪くない。それでも営業利益率は約1%、安全余裕率は約2%──損益分岐点のすぐ上で綱渡りしています。カテゴリ別に見てみると、生鮮の「くだもの」が売上最大。しかし利益率は約29%。一方、イートインは利益率約52%で、こちらが利益の柱です。「どの商品が売れているか」と「どこに手を入れるべきか」は、必ずしも一致しません。
分析レポートやチャート、Looker Studio を行き来しながら、冬場の売上をどう改善するかを、個人案→グループ案→発表まで進めます。見つけた本質は、KGI → KSF → KPI → アクションプラン → PDCA に落とします。DX経営計画の発表回へつながる、「現場で動く指標」の作り方を学びます。
更に今年は演習の中で、皆さんにAIと壁打ちして頂き、トークンを使ってAIと共に対策を考えて頂く予定です。更にグレードアップさせるべく構想を練っているところです。
※昨年の演習用のストーリーとレポートは、公開しています。
2026年度・各地の開催
データドリブン経営の回の予定日は、おおむね次のとおりです。定員や申込期限は主催者ごとに違いますので、詳細は各公式ページをご覧ください。
| 開催地 | 名称の例 | データドリブン経営 開催日 |
|---|---|---|
| 静岡・浜松 | 意思決定力改革塾 | 2026年10月23日 |
| 香川・高松 | AI‐X経営塾 | 2026年10月7日 |
| 宮崎・都城 | DX経営塾 | 2026年11月9日 |
| 福井 | ふくいDX経営塾 | 2026年10月16日 |
| 兵庫・姫路 | DX経営塾2026 | 2026年10月29日 |
| 愛知・名古屋 | DX・生産性向上ゼミ | 2027年1月14日 |
自社向けに特化したセミナーをご希望なら
開催地が遠い、申し込みに間に合わなかった、少人数で自社の数字を使って議論したい──そうお考えでしたら、社内の勉強会という形でも類似のセミナーを企画できます。「AIが現場へ降りてくる——台北のCOMPUTEX視察から2030年の製造業を読む」と題した60分の勉強会や、ベテランの頭の中・社長の判断基準をAIと一緒に整える短いセッションなど、DXに取り組むための導入部をいくつか用意しています。詳しくは情報資産化の話に書きました。
最後に。講座で繰り返しお話しさせていただくのは、次の言葉です。
現象突き詰めた先に本質がある。
本質を読み解くことで、顧客が満足する価値を見つけましょう。
皆さまの勘とコツ、経験、知恵を、次の一手を構想するための資産へと昇華させる。それが、データドリブン経営の目的です。
言葉にならない課題をお持ちなら、いちど話してみませんか?
単なるシステムの導入ではなく、貴社の文化や文脈に寄り添う「伴走型DX支援」を行っています。 まずは雑談のような気軽な気持ちで、お持ちの課題やこれからの展望を一緒に話す(ディスカッションする)ところから始めませんか?



